できれば、家で働けたらいいのに───。
病気や障害が原因で、体調が不安定になったとき、通勤が負担になったとき、そんなふうに思ったことはありませんか。
でも、いざ在宅ワークの求人を見てみると、「経験者歓迎」「スキル必須」そんな言葉が多く目に入ります。
在宅で働くことは、本当に難しいのでしょうか。

この記事では、病気や障害を持つ方が在宅ワークを目指すときに、知っておきたい現実と、それでも目指すならどんなことを準備していけばいいのかについて、私の実体験も交えながらまとめてみました。
むかしバリバリ働けていた人ほど今がつらいはず

以前は当たり前のように、毎日朝起きたら出社して、夕方まで働いていた。繁忙期には夜遅くまで残業もこなし、なんならその後に飲み会まで参加していた。
それが、病気を経験したことがきっかけで、突然すべてできなくなる。体が思うように動かない。通勤がつらい。夕方まで働ききる体力がない。「前はできていたのに」と思ってしまうことが、いちばん苦しい。
周囲の同僚も、後輩だって、今までと変わらず働いている。自分だけ、時が止まってしまったような感覚になる。だからこそ、焦る。
早く仕事を見つけなきゃ。家でできる仕事はないだろうか。在宅だったら何とかなるのではないか───
私自身もそんなことを考えていました。
2年連続で、手術を伴う大きな病気を経験するまでの私はずっと、出社前提の働き方しか考えたことがありませんでした。まさか自分が「家で働く方法」について、本気で考える日が来るとは思っていませんでした。私はここ2年以上、完全在宅で仕事をしています。
在宅ワークならすべて解決する、とは限らない理由

「通勤がなくなれば、きっと楽になるはず」そう思うのは自然なことです。
満員電車に乗らなくていい。人混みのなかに行かなくていい。体調が悪い日は横になれるかもしれない。確かに、通勤の負担がなくなるのは大きなメリットです。
でも、在宅ワークは「負担がゼロになる働き方」ではありません。むしろ、自己管理はより求められ、成果で評価されやすく、体調が不安定な状態では納期を守るのが難しいという側面もあります。
家で働くということは、自分で自分をコントロールする力がより必要になる、ということでもあります。
だからこそ、「在宅ワーク・在宅勤務なら何とかなるかも」と急いで応募する前に、一度立ち止まって考えてほしいのです。よく考えないまま応募して、何度も不採用通知を受け取ったり、なかなか収入に繋がらなかったりするのは、けっこうメンタルに来ます。
スキルなしで完全在宅ワークに採用されるのは簡単ではない

少し現実的な話をします。
在宅ワーク、とくに完全在宅の求人は、とても人気があります。通勤が不要で、場所に縛られない働き方、それを望む人は多いからです。だから、応募も集中します。
企業側からすると、在宅勤務に求める人物像というのは「ある程度自走できる人」の方が現実的になります。
ある程度自走できる人というのは、こういう人物のことを指します。
応募条件には書かれていなくても、こういった人物が採用されるケースが多いのです。だから実際には、スキルがあまりない状態で、いきなり完全在宅求人の採用を貰うのは、そう簡単なことではありません。
ただし、これは絶対に無理 という意味ではありません。「ある程度の準備は必要」という意味です。
遠回りに見えるかもしれませんが、スキルを身につける期間を持つことは、在宅での働き方を実現するための第一歩になります。
病気や障害を抱えて在宅ワークしたいとき着実な方法は?

病気や障害を抱えた方が「在宅で働きたい」と思ったとき、「なるべく早く」「今の自分のスキルで通用するところを」と考えるのは、とても自然なことです。
しかし、今までに経験したことのない働き方を望む場合は、いまの自身のスペック・状態でスタートするよりも、遠回りに見えて着実な方法があります。
たとえば、
といった選択肢があります。
遠回りに見えるかもしれません。でも、土台ができていないまま在宅ワークに飛び込むよりも、準備期間のあいだにスキルをつけてからのほうが、結果的に条件の良い仕事に就きやすく、長く続けやすくなります。
就労移行支援サービスについては、別の記事で詳しく解説しています。
▶ 障害者の就労移行支援サービスとは?種類・役割・向き不向きを経験ベースでわかりやすく整理します
フリーランスとして在宅で働く選択肢について、おもな仕事例を含めて解説しています。
▶ 障害者はフリーランスで働ける?実体験からメリットデメリットと仕事例を解説します
もしかしたら、今は「長く働くための準備期間」かもしれない

病気や障害を経験していったん社会から離れると、
「早く社会に戻らなきゃ」
「何もしていない自分はだめなんじゃないか」
こう考える方が多いと思います。しかし、病気や障害を経験したあとにいちばん大切なのは、まずは身体と心を整えて、いまの状態を知ることです。
生活リズムを安定させる。1日どれくらい動けるのかを知る。無理をすると自分はどうなるのかを把握する。
こういったことも立派な、社会復帰のための準備です。働いていない時期があったとしてもそれは、前に進んでいないわけではありません。
回復することも、いまの自分の限界を知ることも、次に長く働いていくための土台づくりになります。焦らなくても大丈夫。未来に向けて準備を整える時間は、無駄にはなりません。
それでも在宅ワークを目指したい方には

ここまで読んでも、「それでも、私は在宅で働けるようになりたい」そう思う方もいると思います。私もそうでした。
私は幾つかの資格は持っていましたが、すぐに在宅ワークが始められるほどのスキルや経験を、最初から持っていたわけではありません。
当時の私がやっていたことは、とても地味なことでした。
私が実際にやったこと

病気が続いて何度も入退院を繰り返し、しばらく社会から離れていた私の場合は、まずは以下のようなことを始めました。
私のケースでは、色んなことを完璧にできるようになってから、柱となる仕事を探したわけではありません。希望する働き方を実現するために、訓練中でもできるような案件に応募しつつ、少しずつ実績を積んでいった感じです。
時給に換算したらおそらく、数十円レベルの時期が長く続いたと思います。遠回りに見えましたが、私の場合は結果的にこれがいちばんの近道でした。
在宅ワークは、特別な人だけのものではありません。

でも、「なんとなくできそう」でスキルゼロで始めるよりも、小さな準備を積み重ねてから取り組むほうが、ずっと成果が出しやすく続けやすくなります。
今日できることは、ほんの小さなことかもしれません。タイピングを10分練習する・Wordを開いて触ってみる・働き方の記事を読む、そういったことでも十分です。
在宅という働き方は、焦らず準備していけば、きちんと選べる道になっていきます。
もしも、病気や障害が原因で元のような働き方ができず、「ひとりではスキルアップしていく自信がない」「何から始めればいいか分からない」そう感じる方には、就労移行支援サービス※を利用するという選択肢もあります。
※就労移行支援サービスというのは、一定の病気や障害を持つ方が、無料もしくは安価で、就職を目指したスキル習得や就職活動、職場定着のサポートを受けられる福祉サービスのことです。このサービスについては、国の法律できちんと定められています。
就労移行支援サービスのなかには、通所しながら専門的なスキルを学ぶところもありますし、在宅で訓練を受けられる事業所も増えています。病気や障害を持つ方に向けた職業訓練のような福祉サービスといえるでしょう。
自分に合ったルートを、ゆっくり探していけば大丈夫です。
まとめ

在宅で働きたい。その気持ちは、わがままでも甘えでもありません。
でも、現実として在宅ワークは「スキル前提」の世界でもあります。だからこそ、焦って飛び込むよりも、小さな準備を積み重ねることがいちばんの近道になります。
体を整えること。生活リズムを安定させること。PCスキルを少しずつ身につけること。それらもすべて、在宅ワーク実現への第一歩です。
病気や障害を抱えながら在宅で仕事をしたい場合に、考えうるルートの全体像についてまとめた記事もあります。
▶ 障害者の在宅ワークはどんな求人がある?働き方・探し方を当事者が経験ベースで解説します
もし、「ひとりで訓練するのは不安」「何から始めればいいか分からない」そう感じる場合は、就労移行支援サービスを利用するという選択肢もあります。
事業所によって、Microsoft Office全般・会計・英語・Web系全般・プログラミング・動画制作・AI関連など、かなり高度なスキルを実践的に学べるところもあります。
在宅という働き方は、いきなり叶えるものではなく、準備しながら整えていくものです。あなたのペースで、選べる未来にしていけば大丈夫です。
フリーランスとして在宅で働く場合のおもな職種について、メリットデメリットを含めて解説しています。




