就労移行支援事業所という言葉を聞いたことはあっても、

何をするところなの?どんな人に向けた場所なの?

色んなところがあるけど、ぜんぶ同じじゃないの?そもそも利用する意味あるの?
などなど、実情が分からず、利用自体を迷っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、精神障害の当事者である私が、実際に就労移行支援を利用した経験も含めて、
このようなポイントについて、できるだけ冷静に整理していきます。

就労移行支援の存在を知ったばかりの方が、自分にとって必要かどうかを考える材料になれば嬉しいです。
就労移行支援事業所ってどんな場所?何するの?

障害や病気などが理由で現在働くことができていない方のなかには、さまざまなケースが存在します。

体調を崩して仕事を辞めてから、回復に時間がかかってて…
早く復帰しなきゃ考えるほど、不安や焦りが強くなっちゃう…

今までのような働き方はもう無理かも…
なにか新しいスキルを身に付けたほうがいいのかな?
こういったケースで選択肢に挙げられるのが、就労移行支援事業所の利用です。
就労移行支援事業所で行われるサービスは、民間企業が独自で提供しているものではなく、障害者総合支援法にもとづいて定められた「障害福祉サービス」の一つになります。
このサービスは厚生労働省が制度として位置づけており、全国に事業所が設けられています。
▶ 就労移行支援の制度概要(厚生労働省ホームページ)
また、利用にあたっては原則1割の自己負担が求められるのですが、所得に応じて月額の上限が決められているため、多くの方は実質的に自己負担なしで利用しています。
▶ 障害福祉サービスの利用者負担について(厚生労働省ホームページ)
就労移行支援サービスの利用対象となるのは原則として、65歳未満で、一般就労を目指している障害や病気のある方です(精神障害・発達障害・身体障害・内部障害・難病など)。

病気や障害で社会に出る自信をなくしてしまった方向けに、次の一歩を踏み出してもらうためのサポート地点。そんな位置づけで捉えると、イメージしやすいかもしれません。
就労移行支援事業所の主な役割

就労移行支援事業所の役割は、大きく分けると次の4つです。
- 働くための準備・リハビリ的な役割
- 自分に合う働き方・配慮の整理
- 必要なスキルの習得
- 就職転職・定着までのサポート

事業所によって、この①から④のどこに一番力を入れているのかが、少しずつ異なってきます。まずは、①から④の概要についてご紹介していきます。
① 働くための準備・リハビリ的な役割

生活リズムを整えたり、通所習慣をつくったりと、「働く前段階のリハビリ」としての役割を担います。
といったことを、実際の通所を通じて確認していきます。
② 自分に合う働き方・配慮の整理

就労移行支援では、
といった点を、支援員と一緒に整理していくことができます。
これは、就職・転職活動時の自己理解や、企業への説明にもつながる重要なプロセスです。
③ 必要なスキルの習得

利用者のなかには、病気や障害が原因で、キャリアを中断したり変更せざるを得ない状況にある方も少なくありません。
そんな方のニーズにも応えられるよう、さまざまなジャンルに特化した事業所も登場しています。例えていうならば、職業訓練校に近い要素を持つといえます。
特化型タイプの事業所を中心として、下記のような幅広いスキルの習得に力を入れているところがあります。
とくに、「今後は在宅で仕事ができるようになりたい」「スキルを身に着けてキャリアアップに繋げたい」と考える場合においては、スキル習得に力を入れている事業所かどうかは、見学の段階で必ず確認しておきたいポイントです。
目的をもって通うことで、就労移行支援の利用は、社会復帰準備の場からリスキリングの場へと変わっていきます。
④ 就職・定着までのサポート

就労移行支援事業所は、
まで一貫して行っているところもあります。
「就職したら終わり」ではなく、働き始めてからの不安も含めて支援するのが、就労移行支援の特徴です。
就労移行支援事業所を3つのタイプに分類してご紹介します

前の章でも概要をご紹介したとおり、就労移行支援事業所というのはどこを利用しても同じ訓練内容・同じ雰囲気というわけではありません。
事業所ごとに、
が大きく異なります。

こちらの章では、代表的なタイプを3つに分けて整理していきます。
通所型の就労支援(一般型)

もっとも一般的で数が多いのが、通所型の就労移行支援事業所です(全体の8割程度)。
決まった曜日・時間に事業所へ通い(週3~5日)、軽作業や模擬業務・グループワークなどを行います。生活面・就職面のサポートなどを受けて、総合面から社会復帰する準備を進めていきます。
まずは家から外に出て、「通うこと自体が目標」という段階の方にとっては、生活リズムを整える場としても機能します。
一方で、
こういった方にとっては、ハードルが高い・自分には合わないと感じられるケースもあります。

全国にたくさんの拠点を持つ事業所も多く、一般的に「就労移行支援」と聞いて多くの人が思い浮かべるのが、この通所型になります。
こちらは通所型就労移行支援事業所の一例です。
▶ パーソルチャレンジ・ミラトレなど
各就労移行支援事業所について詳しくは、別の記事で解説していきます。
▶ 就労移行支援事業所3種類の違いと向き・不向きを詳しく見る
在宅対応・オンライン対応の就労支援

近年増えているのが、在宅対応・オンライン対応を行っている就労移行支援事業所です。後ろの項で登場する「特定分野特化型」に近い要素もありますが、一番の特徴は在宅利用ができる点です。
といった柔軟な利用ができる事業所も増えています。
通所が難しい方や、ゆくゆくはPC利用を前提とした在宅勤務を視野に入れている方にとっては、現実的な選択肢になりやすいタイプです。
ただし、
こういった点には注意が必要です。
こちらは在宅対応型就労移行支援事業所の一例です。
▶ 在宅×ITスキルで自分らしく働く【就労移行支援manaby】
▶ 進路は障害者雇用だけにとらわれない【キズキビジネスカレッジ】
在宅対応型の就労移行支援については、別の単独記事でさらに詳しくご紹介しています。
▶ 在宅型就労移行支援とは?利用できる方・メリット・向き不向きを解説
特定分野に特化した就労支援

就労移行支援事業所のなかには、
など、特定の分野により特化したところも存在します。
特定のスキル向上を目的としたカリキュラムが用意されていることもあり、興味のある分野が明確な方にとっては、モチベーションを保ちやすい環境になります。とくに職業訓練校にいちばん近い要素を持つのが、こちらのタイプです。
一方で、
というケースには、合わない可能性もあります。
こちらは特定分野特化型就労移行支援事業所の一例です。
▶ AIやデータサイエンスが学べるIT特化の就労移行支援【Neuro Dive】
▶ 障害者専門のIT・Web就労支援サービス【atGPジョブトレIT・Web】
各就労移行支援事業所について詳しくは、別の記事で解説していきます。
▶ 就労移行支援事業所3種類の違いと向き・不向きを詳しく見る
実際に通って分かった就労移行支援事業所の現実

私は、正社員で在籍していた会社を休職していたとき、リワーク※の一環として就労移行支援事業所に通ったことがあります。※リワークとは、復職支援プログラムのことです。
当時の私は、復職期限に間に合うかどうかの瀬戸際にあり、体調がまだ万全と言えない状態でした。
当時いた会社では、休職中の社員が復職を希望する場合、就労移行支援事業所に一定期間通所することが条件になっていました。私が通っていた事業所は会社から指定されたところで、特に何かに特化したプログラムではありませんでした。
復職のための通所スケジュールは、平日5日間 × 1日6時間程度。
プログラムの内容は、配られた用紙に書かれた計算をする・他の通所者が提出した用紙を採点する・事務作業を想定した模擬的な訓練を繰り返す といったような、事務系の汎用的な模擬業務が中心でした。

当時は体調と精神面に余裕がなかったこともあり、この訓練が自分の将来にどうつながるのか、前向きに考えるのは難しかった…というのが正直な感想です。
一方で、今あらためて振り返ると、体調が安定した状態で、自分の興味が持てる分野であれば、就労移行支援の利用は前向きに楽しめたかも…と思います。
就労移行支援事業所は、
によって、利用者側の負担の感じ方や得られるものが大きく変わります。

そのため、就労移行支援の利用については、今の自分の体調やキャリア・関心に合うかどうかという視点で選ぶことが大切だと感じました。
就労移行支援の利用が向いている人・向いていない人

就労移行支援事業所の利用は、誰にでもおすすめできるというわけではありません。
ここでは、実体験やよくあるケースをもとに、どんな人に向いていて、どんな人にはあまり向かないのかを整理していきます。
就労移行支援が向いている人

就労移行支援は、次のような状態にある方に向いているケースが多いです。

とくに、今すぐ転職することよりも、安定して働き続けるための準備期間が必要な人にとって、就労移行支援はサポートの役割を果たしてくれます。
就労移行支援が向いていない人

一方で、次のような場合は、就労移行支援が合わないと感じることもあります。

このような場合は、就労移行支援ではなく、転職支援サービスの利用や、直接企業に応募するほうが合っているケースもあります。
大切なのは「今の自分」に合っているかどうか

就労移行支援事業所を検討するときに大切なのは、気になる事業所の口コミを見ることだけではありません。実際に見学に行って、話を聞いてみることがいちばん大切です。
そこではじめて、今の自分の状態・目的・ペースに合うかどうかの最終判断をすることができます。

就労移行支援事業所は、それぞれが異なる特長を持っています。合う人にとっては心強い存在になる一方、合わない人にとっては負担になることもある——そんな性質のサービスだと言えます。
就労移行支援事業所の次に見えてくる選択肢

就労移行支援事業所の利用というものは、それ自体がゴールではありません。一定期間の通所・訓練をして準備を進めたあとには、人それぞれ異なる「次の選択肢」が見えてきます。
代表的なのは、次の5つです。
就労移行支援 → 障害者雇用という選択肢

体調や生活リズムがある程度安定し、「配慮を受けながら長く働きたい」という希望が明確になった場合は、障害者雇用枠での就職につながるケースが多くあります。
就労移行支援事業所では、
・自分に必要な配慮
・無理のない勤務条件
・得意・苦手な業務の整理
などを事前に言語化する機会があるため、
入社後のミスマッチを減らしやすいのが大きなメリットです。
就労移行支援 → 一般就労やフリーランスという選択肢

就労移行支援を利用したあとの進路は、障害者雇用だけではありません。体調やスキル、希望する働き方によっては、一般就労やフリーランスを選ぶ人もいます。
実際に、スキル訓練に力を入れている事業所では、一般就労での就職を目指してサポートを受けるケースも少なくありません。ただし、一般就労の場合は障害に対する配慮は前提ではないため、自己理解や体調管理の安定がより重要になります。
そのため、
・今の自分にはどの働き方が合っているのか
・配慮は必要かどうか
・長く続けられそうか
といったことを、事業所の支援員と一緒に整理しながら決めていく流れになります。
「就労移行支援事業所=障害者雇用に進む場所」と決めつけず、自分に合った道を探すためのステップと考えるほうが自然かもしれません。
就労移行支援 → 転職サービスを使うという選択肢

ある程度「働けるイメージ」が固まってきた段階で、転職支援サービスを併用する人もいます。転職支援サービスのなかにも、障害者雇用を中心とするところと、一般就労だけを取り扱うところがあります。
転職支援サービスでは、
・求人の紹介
・応募書類の作成サポート
・企業との条件調整
など、就職活動そのものを前に進める支援が中心になります。就労移行支援で土台を整えたうえで使うことで、より現実的な選択肢として活かしやすくなります。
▶ 障害者が使える転職サービスを幅広い視点でピックアップしています
就労移行支援の利用 → 今はいったん見送る、でもOK
就労移行支援事業所を利用してみた結果、

今はまだ働けるタイミングじゃないかも…

もう少し別の形で体調回復を優先したい…
このように判断するのも間違いではありません。一度立ち止まって状態を整理できたこと自体が、次の一歩につながる大切なプロセスになることもあります。

就労移行支援は、利用したら必ず就職しなければならない、という場所ではない点も、知っておいてほしいポイントです。
就労移行支援は合う人には「頼りになる選択肢」

就労移行支援事業所の通所・利用は、誰にとっても万能な選択肢、というわけではありません。通所や利用すること自体の負担を感じる方もいれば、支援や訓練の内容が合わないと感じる方もいます。
一方で、体調を立て直したい・働き方を整理したい・新しいスキルを身に着けたい そんなタイミングにぴったりハマる方にとっては、就職・転職前のトレーニング機関として、非常に心強い選択肢になります。
大切なのは、ひとつの事業所だけで判断せず、実際に見学して雰囲気を確かめることです。見学する際には、今の自分に合っているか、という視点を忘れないようにしましょう。
就労移行支援事業所について、異なる3種類の特徴をさらに深堀りした記事も書いています。もう少し深く知ってみたい方は、こちらの記事もどうぞ。



