障害者雇用で転職活動をしていると、「特例子会社」という言葉を目にすることがあります。特例子会社とは、企業が障害者雇用を進めるために設立する子会社のことです。
私も当時、障害者枠で応募した特例子会社から内定をもらい、入社を決めました。その理由はとてもシンプルでした。
当時の私は、これだけ条件が揃っていれば安心して長く働けるはず。そう考えていました。
しかし、実際に働いてみると、想像していた環境とは違う部分もたくさんありました。

この記事では、私が特例子会社で正社員として5年間働いた体験をもとに、実際に感じたことを正直に書いていきます。
私自身、こちらの会社に入社するまでかなり悩みながら転職活動をしていました。当時の私はどんな基準で転職先を選んでいたのかは、こちらの記事で詳しく書いています。
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特例子会社とは?障害者雇用のための制度

特例子会社とは、障害者雇用を促進する目的で、企業が設立する子会社のことです。一定の条件を満たして国の認定を受けると、特例子会社で雇用する障害者を親会社の雇用人数として算入できる仕組みになっています。
この制度は、企業が障害者雇用を進めやすくすることを目的としており、大企業グループを中心として、多くの特例子会社が設立されています。
一般企業とは異なり、障害者が働きやすい環境づくりや配慮体制が整えられているケースも多く、障害者枠で転職を考える方の候補先として検討されることも少なくありません。

私自身も障害者枠での転職活動中に、特例子会社から採用を貰いました。採用時は嘱託社員でしたが、一定期間後に正社員登用されました。
しかし実際に働いてみると、想像していた環境とは違う部分も多くありました。ここからは、そのときに感じたことを体験談としてお話ししていきます。
特例子会社入社後の最初の違和感|自分のスキルと周りのレベル

ここでご紹介する私の経験はおそらく、世の中の多くの方が抱く「特例子会社の印象」とは、少し異なるものかもしれません。
私の配属先は、会社の中枢である管理部門(経理)でした。私は簿記の資格を持っており、できれば資格を活かしてスキルアップしたいと考えていました。
入社してすぐに感じたことは、想像よりも周囲のレベルが高い環境だったということです。
そのため、スキルアップ目的の転職という点では、今回の転職は成功だったと思います。さすがに、自分が今までいた中小企業と大企業の子会社とでは、ぜんぜん違うんだなと感じました。

今までいた職場では、自分はそこそこできるほうだと思っていました。しかしこの職場では、そう感じる場面はほとんどありませんでした。
仕事についていくため、業務後や休日には独学で勉強する日々が待っていました。
ただ、常に気を張った状態が続き、少しずつ疲れが蓄積していったのも事実です。
人間関係による消耗|無視できなかった環境

私がいちばん想定していなかったのが、人間関係による消耗でした。
この職場にはそれまでの会社にはいなかった、陰口を吹聴したり無視をするタイプの人がいたのです。それも、何人か。
その人達の気分次第で、自分も周囲の人も、日替わりでターゲットにされるような職場環境でした。彼女たちは、上司がいるときは大人しくしており、上司が出張などでいなくなるととたんに、手を動かさずに口を動かすようなタイプでした。
頭では「そういう人たちなんだ」と理解していても、特性上それを完全に受け流すことができませんでした。他の人のことを言われているときであっても、まるでいつも自分が陰口を言われているように感じてしまっていたのです。
結果的に、確実にメンタルが削られていくのを感じていました。
仕事の進め方の違いに疲弊していった

特例子会社では、仕事の進め方もそれまでの私の経験とは大きく異なっていました。
たとえば、
このやり方自体は理にかなっていますし、スキルアップにもつながります。ただ、この進め方に慣れるまでの気疲れは、想像以上でした。
常にチーム内で足並みを揃えながら仕事を進めないとNG という環境が、私にとっては予想以上の負担になっていきました。
特例子会社という環境で感じたギャップ

この会社は特例子会社だったため、さまざまな特性を持つ社員が働いていました。
さまざまな特性というのは、身体障害・内部障害・精神障害・発達障害・知的障害など、ほんとうにさまざまな障がい・さまざまな症状を持つ方が在籍する環境だったのです。
もちろん、入社前からこの会社がそういう環境だということは理解していました。
ただ、実際に入社してみると、多様な方がいる環境は良い面もありましたが、想像していた以上に気を遣う場面が多い環境だと感じました。
たとえば、業務時間内外を問わず、全社的なイベントがたくさんありました。たとえるなら、仲の良い大家族のような雰囲気でした。
多くの人に囲まれながら仕事を進める状況というのは、私の特性上かなりの負担になっていたのだと思います。それでも当時の私は、「これは許容範囲内だ」と自分に言い聞かせていました。
入社直後に起きた想定外の出来事

ここまでにも精神的負荷を感じる要因が幾つかありましたが、一番大きな負荷となった事件がこちらです。
仕事を教えてくれていた障害当事者の先輩が、私の入社後わずか1週間で、突発的に長期入院することになってしまったのです。それから半年は帰ってこられませんでした。
業務を聞ける人は社内にいなくなり、その日から私は毎日夜10時まで残業する日々が続きました。

慣れない環境のなか、夜遅くまで残業続きの毎日が始まり、不安と疲労が一気に積み重なっていくのを感じていました。
追い打ちをかけたのが遠方通勤

さらに、当時私が暮らしていたアパートから会社までは、片道1時間40分かかっていました。
本当は、私はあまり家から遠い会社を選ぶつもりはありませんでした。しかし、大企業の子会社というネームバリューに負けて、デメリットに目をつぶって選んでしまったゆえの結果でした。
ここまでに挙げた背景を抱えての遠方通勤は、精神的にも身体的にも想像以上の負担になっていました。

結果的に私は、入社から10ヶ月でフルタイム勤務に限界を感じ、短時間勤務へ切り替えてもらうことになってしまったのです…
条件で選んだ結果、条件を失ったという皮肉な結末

この転職は、有名企業子会社の正社員・給与・福利厚生といった、条件を重視して選んだものでした。
しかし実際には、長時間の通勤と残業続きの毎日が待っていました。結果的に短時間勤務に切り替えざるを得なくなり、当初想定していたような収入は得られなくなりました。
自分の特性よりも条件を優先した結果が、これだったのです。
当時の私にとっては精一杯の選択でしたし、今となっては、ひとつの大きな教訓だったと感じています。
私はこの後、会社の近くに引っ越しすることになります。障害者雇用の週30時間勤務でひとり暮らしをすると、収支はどんな感じになるのでしょうか。

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💡振り返りポイント|条件よりも大切だったこと

この転職を振り返って、今だからこそはっきり言えることがあります。
当時の私は、正社員であることや、給与などの福利厚生、そして会社の安定性といった、目に見える条件を最優先に転職先を選んでいました。
それ自体は、決して間違いではありません。当時の生活(ひとり暮らし/頼れる親族なし)を考えれば、自然な判断だったと思います。
ただ、結果的に私は、フルタイムで働き続けることができなくなっています。
原因となった要素を並べてみると、
これらのひとつひとつだけを見ると、我慢できなくはないように見えます。しかし、これらが全部積み重なることで、確実に心と身体を蝕んでいったのだと思います。
入社前の私は、「たぶん大丈夫」「条件がいいから、多少のことは我慢できるはず」そう自分に言い聞かせていました。今思えば、その時点で無理をしていたのかもしれません。
この経験を通して学んだのは、条件がどれだけ良くても、自分の特性に合わない環境を選ぶと、いつかは無理が生じるということです。

これは失敗談でもありますが、同時に次の選択に繋がる大きなヒントにもなりました。
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