精神障害者手帳を取ると、働き方の選択肢は限られる と感じてしまうことがあります。

障害者雇用しかないでしょ?
一般採用なんて無理でしょ?

在宅で働く なんて、特別な人だけの話でしょ?

私自身も、そう思い込んでいた時期があります。
けれど実際には、障害の有無や診断名だけで決まる働き方は、存在しません。その時々の体調・環境・制度によって、選択肢は少しずつ変わっていきます。
この記事では、精神に障害を持つ方に考えられる働き方の選択肢について、できるだけ整理して言葉にしていきます。
どれかを勧めたり、正解を示したりする場所ではありません。選ぶ前に知っておける材料として、「こんな道もある」という情報を並べていくための場所です。
ここから先は、具体的な制度や働き方の話に入る前に、まず「全体像」から整理していきます。細かい違いよりも先に、どんな選択肢があるのかをざっくり把握してもらえたらと思います。
選択肢はひとつじゃない

私が自分の障害について自覚をし、その後の働き方を考え始めたとき、これから選ぶものは「一度決めたら変えられない」かのように捉えていました。
しかし実際には、働き方というのは固定されるものではなく、行き来をしたり組み合わせたりできるものでした。
たとえば私は今までに、以下のような経験をしています。
これらは、どれか一つに絞らなければいけないものではありません。体調や環境が変われば、選び直すこともできます。

この記事では、働き方の選択肢について現実的な可能性がある形に整理し、ひとつずつ言葉にしていきます。
次からはそれぞれの選択肢について、もう少し具体的に見ていきます。
働き方の選択肢は大きく分けると4つある

精神に障害を持つ方が「自分に合う働き方」について考えるとき、細かく見ていくと選択肢はけっこうたくさんあります。
こちらの章ではまず、働き方の選択肢について大きな枠組みで整理していきます。

私の経験と今までに入手してきた情報から、おもに次の4つに分けて考えることができます。
- 障害者雇用(通称「オープン」)
- 一般採用(通称「クローズ」)
- 在宅勤務(オープン/クローズ両方)
- フリーランス(障害関係なし)
次の項で、①から④まで順番に解説していきます。
① 障害者雇用(オープン)
障害があることを開示したうえで、企業と雇用契約を結ぶ働き方です。
配慮を前提に働けたり制度面でのサポートが受けられる一方、職種や業務内容などの選択肢が限られる場合もあります。
② 一般採用(クローズ)
障害を開示せず、一般の枠で働く選択肢です。
求人の幅は広がりますが、障害者雇用のような配慮はありません。体調や特性については、自分で調整・管理する必要があります。
③ 在宅勤務(オープン・クローズ)
出社を伴わず、自宅を拠点に働く形です。
通勤移動による身体的負荷、対人・環境要因による精神的負荷を減らせるのが大きな特徴です。その反面、自己管理の難しさや孤独感を感じる方もいます。
④ 個人事業主・業務委託などフリーランス
会社に雇われるのではなく、個人で仕事を請け負う形の働き方です。
自由度は高いですが、収入や仕事量が安定しにくく責任もすべて自分で負うことになります。
この後の記事では、①~④の選択肢について、
を、できるだけ整理して書いていきます。

これらは「向き・不向き」を断定できるものではなく、その人の状態やタイミングによっても意味が変わっていく選択肢です。
障害者雇用という選択肢(オープン)

障害者雇用は、障害があることを企業に開示したうえで、配慮を前提に働く選択肢です。

精神障害者にとっては、体調や特性について説明できる安心感がある一方で、現実的な難しさも存在します。
障害者雇用のメリット

障害者雇用の大きなメリットは、法律に基づき合理的配慮の提供が企業に求められている点です。
2024年からは、事業者による合理的配慮の提供が義務化されています。
勤務時間や業務量の調整、通院や体調不良への理解、産業医や人事との連携など、配慮の仕組みがあらかじめ想定された状態で採用が行われます。
企業側も障害を開示したうえでの採用を前提としているため、ミスマッチが起きにくい面もあります。
特に、働くこと自体にブランクがある方や、まずは安定した環境で経験を積みたい方にとっては、選びやすい選択肢といえます。
別記事で、障害者雇用の制度の前提について詳しい説明も行っています。興味のある方は、こちらも読んでみてください。
▶ 障害者雇用で働くという選択肢|制度と現場/向き・不向きを経験者が整理します
障害者雇用のデメリット・注意点

一方で、すべての人にとって楽な働き方 というわけではありません。
と感じるケースもあります。また、同じ「障害者雇用」という採用形態であっても、企業や配属部署によって理解度や体制の差が大きいのが実情です。

制度自体は導入されていても、現場レベルでの受け入れが追いついていないケースもあります。
私自身の経験から思うこと

私の場合は、障害者採用の中でもわりと大きい会社の本社で働く機会を得られました。
それまでにいた環境とは大きく変わったことで、「実務の高度なスキル」「大きな組織で働く感覚」「チームでの仕事の進め方」など、たくさんのものを身につけることができました。
決して楽ではありませんでしたが、大組織のなかで揉まれる経験がその後の選択肢を広げてくれたのも事実です。
個人的に、障害者採用は「消極的な妥協案」としてではなく、スキルアップのチャンスにもなりえる選択肢だと捉えています。

応募条件が厳しい有名企業でも、障害者枠では広めの条件で募集があったりします。
障害者雇用が向いている方・向いていない方
障害者雇用は、「向いている/向いていない」がはっきり分かれる働き方でもあると感じます。

これは能力の問題ではなく、今の心身の状態や職場環境とのマッチ度合いによる部分が大きいと感じています。
向いていると感じるケース
例えばこんな状況の方には、障害者採用は比較的向いている選択肢です。
仕事の成果よりも、継続して働くことを重視したい時期には、制度に守られた環境が支えになることもあります。
向いていないと感じるケース
一方で、職場・職種によってはこんな違和感を抱くケースもあります。

このあたりは、実際に働いてみて初めて気づくことも多い部分です。
さまざまな働き方があるなか障害者枠で働く場合の実情について、私自身の経験を踏まえて踏み込んだ内容を整理しています。
▶ 障害者雇用で働くという選択肢|制度と現場/向き・不向きを経験者が整理します
一般採用という選択肢(クローズ)

一般採用(クローズ)とは、障害があることを企業に開示せず、健常者と同じ条件で働く選択肢です。

精神に障害を持つ方にとっては、この働き方を選ぶかどうかで悩む方も多いのではないかと思います。
一般採用(クローズ)のメリット

一般採用(クローズ)で働く最大のメリットは、選べる仕事の幅が広いことです。
「やってみたい仕事がある」「専門性を伸ばしていきたい」という方にとっては、魅力的な選択肢になりやすいです。
また、障害について説明する必要がないため、
「周囲の目を気にせず働ける」「自分のペースで実力を評価してもらえる」
」と感じる方もいます。
一般雇用(クローズ)の難しさ
一方で、クローズには明確なデメリットもあります。
特に精神障害の場合「見えにくい障害」であることから、不調があっても周囲に伝わりづらいことがあります。
その結果、

限界まで頑張ってしまい、ある日突然働けなくなる、というケースも少なくありません…。
クローズを選びやすいタイミング
私自身の経験や、周囲の当事者の話を聞くなかで感じるのは、クローズでの働き方は、いつでも誰にでも向いた選択肢「ではない」ということです。
例えば、

こうした条件がそろっている場合は、クローズで働く選択肢も視野に入ってきます。
クローズは「選択肢の一つ」にすぎない
ここで、一つ大切にしたい視点があります。それは、クローズ(一般就労)で働くことが、「ゴール」「目標」「正解」というわけではない ということです。
障害を開示しないで働く選択も、開示して働く選択もどちらも、自分の能力を社会で活かすための手段に過ぎないです。
状況が変わればオープンを選べることもありますし、逆に後からクローズを選び直すこともできます。
だから私は、クローズ(一般就労)もまた、今の自分に合うかどうかを考えて選ぶための、数ある選択肢の一つとして捉えるのが、ちょうどいいと思っています。
さまざまな選択肢があるなか「一般就労(クローズ)で働く」場合の実情について、私自身の経験を踏まえて踏み込んだ内容を整理しています。
▶ 障害者手帳を取っても一般就労は選べる|クローズという働き方を考える
在宅勤務・リモートワークという選択肢(オープン・クローズ)

在宅勤務やリモートワークは、障害の有無に関わらずここ数年で一気に広がった働き方です。

精神に障害を持つ方にとっても、「現実的な選択肢」として検討しやすくなってきました。
在宅勤務のメリット

在宅勤務の一番のメリットは、環境による負荷を減らせることです。
特に、疲労が蓄積しやすい/パニックや不安による発作が出やすい/朝の支度や移動が負担になる といった方にとっては、通勤がないこと自体が大きなメリットになる場合があります。
在宅勤務の意外な難しさ

一方で、在宅勤務にもデメリットがないわけではありません。
人との距離が近すぎるのがしんどい方もいれば、頼れる人がいないと不安になる方もいます。

在宅勤務は自由度が高い分、自己管理能力が求められる働き方でもあります。
在宅勤務が向いている方
在宅勤務が比較的向いているのは、例えばこんなタイプです。
逆に、

誰かが近くにいて、すぐに質問や相談できないと不安…

こまめに声をかけてほしい…
というタイプの方には、負担になることもあります。
在宅勤務も「万能ではない」
ここでも大切なのは、在宅勤務を「対人ストレスがかかりにくい最高の働き方」と、決めつけてしまわないことです。
今は理想的に見えても、自身の環境が変われば合わなくなることもあります。逆に、以前は無理だったけれど、経験を積んだことで選べるようになるケースもあります。
在宅勤務は「障害者雇用と一般枠の違い」と同じように、数ある選択肢の一つです。

「逃げ」でも「最終形」でもなく、その時の自分に合うかどうかで選んでいい働き方だと思います。
障害の有無に関わらず注目を浴びている「在宅勤務で働く」場合の実情について、私自身の経験を踏まえて踏み込んだ内容を整理しています。
▶ 障害者雇用の在宅勤務という選択肢|求人の実態と向き・不向きを経験ベースで整理します
個人事業主・業務委託・フリーランスという選択肢

個人事業主・業務委託・フリーランス。これらは厳密には意味が異なりますが、本記事では「会社と雇用契約を結ばず、成果単位で報酬を得る働き方」という意味で、まとめて扱っていきます。
以降は、便宜上「フリーランス」という言葉を使っていきます。
フリーランスは、ここまでに紹介してきたような「雇用される働き方」とは、前提が大きく異なります。
サラリーマンやOLは、会社と「雇用契約」を結ぶ働き方であるのに対し、フリーランスは、会社と雇用契約は結ばず、収めた成果に対して対価を得る働き方になります。

フリーランスと聞くと、「在宅勤務で働く人を指す」と混同されがちですが、まったく別の概念だと考えたほうがよいです。
会社員とフリーランスの決定的な違い
会社員とフリーランスの一番大きな違いは、守って貰える仕組みがないことです。
自由度が高い一方で、すべての責任を自分で引き受ける必要があります。
この点を知らないまま、「家で働けるなんて、自由そうでいいな…」というイメージだけで選ぶと、ギャップが大きくなりやすいです。
それでも選択肢になり得る理由

自己責任が基本でシビアな面も多いですが、フリーランスが現実的な選択肢になる方もいます。
例えば、
こうした条件がそろうと、雇用されるよりも現実的で続けやすいと感じるケースもあります。
私の場合「いまは」この形に落ち着いている
私は今のところ、在宅フリーランスという形に落ち着いて仕事をしています。
これは、昔から目指していたからでも、理想として選んだからでもありません。
私のケースではここ数年間の、
これらの背景を踏まえた結果、現在はこの形が一番負担が少なかったからです。必要に迫られたからというのが、一番しっくりくる答えかもしれません。

フリーランスを勧めたいわけでも、これが正解と言いたいわけでもありません。ひとつの事例だと思ってください。
自身の経験をふまえ、精神に障害を持つ方が在宅フリーランスを検討するとき、考えておきたいポイントをまとめています。
▶ 障害者の働き方で在宅ワークのフリーランスはアリ?|現実と向き・不向きを整理する
フリーランスも選択肢の一つ|特別視はしなくてOK
ここまでにご紹介してきた、障害者雇用・一般採用(クローズ)・在宅勤務・フリーランス。
これらの働き方はどれも、そのとき置かれた状況によって選び直していい選択肢です。今の自分に合うかどうかの観点で考えて選んでいいと思います。

このスタンスで幅広い選択肢を見ていくと、冷静に判断できると思います。
まとめ|選択肢が増えた今だからこそ大切にしたいこと

今回の記事では、障害者雇用・一般採用(クローズ)・在宅勤務、そしてフリーランスという働き方を紹介してきました。
どれも、こうすべき/これが正解 というものではありません。大切なのは、今の自分の健康状態・置かれた環境・優先事項を明確にして、最適なものを選ぶという考え方です。

体調が不安定な時期もあれば、少し余裕が出てくる時期もあります。生活環境だけでなく、支えてくれる人の有無によっても選びやすい働き方は変わります。
次の記事では、これらの選択肢をどうやって現実的に検討していくのか、実際に使える制度や外部サービスについても触れていきます。
▶ 障害者の転職・就職で頼れる相談先・サービスまとめ|就労支援と転職サービスの違いを整理
私がいままでに、どんな順番で試し、どこでつまずいて来たのかについては、体験談記事で詳しく書いています。


私の経験が、
あなたの「考える材料」の一つになれば嬉しいです。


