障害を持つ当事者にとって「在宅勤務」という働き方をみたとき、

体調に合わせて無理なく働けそう!
通勤がない分、続けやすそう!
そんなイメージを持つ人も多いと思います。実際に、障害者雇用の中でも在宅勤務の求人は、年々増えてきています。
その一方で、

誰にでも現実的な選択肢かというと、そうとは限らないのも事実です。
特に、「精神障害者にとって」という観点で考える場合、在宅勤務について「配慮が多い働き方」というよりも、高い自己管理能力や実務スキルが求められる働き方として捉える方が、現実的だと言えます。
今回の記事では、障害者雇用における「在宅勤務」という働き方について、
といった、事実面について整理していきます。障害者雇用の求人の中でも、在宅勤務という選択肢についてどう考えればよいのかを考えていきましょう。
在宅勤務を否定するための記事ではありません。ただ────

家で働けるなんて魅力的、という好意的な印象は一旦置いておき、自分の状態や経験と照らし合わせて考えるための、材料として読んでもらえたらと思います。
障害者雇用の在宅勤務とは(制度・求人の実態)

障害者枠で募集される「在宅勤務求人」には、障害への配慮を目的として、新たに用意されたポストが存在することもあります。
ただし実際に多いのは、すでに在宅勤務制度を導入している企業が、その業務設計や運用ノウハウを障害者雇用にも広げているケースです。
障害者雇用の制度上、「在宅勤務でなければならない」「在宅勤務を優先すべき」という決まりはありません。在宅勤務という働き方が実現するかどうかは、あくまで、

こうした条件がそろった場合に、「在宅勤務という形が選択される」という位置づけになります。
障害者枠の在宅勤務求人で多い職種は?
実際の求人を見てみると、障害者雇用の在宅勤務では、
といったように、PCを使って完結する業務が多い傾向があります。
逆に言うと、現場対応や対面が前提になる業務は、障害者雇用に限らず在宅勤務自体が難しいため、求人数もかなり限られてきます。
在宅勤務は配慮が多い「とは限らない」
在宅勤務というと、

体調に合わせて柔軟に働けそう…
通院や休憩の融通がききそう…
というイメージを前面に持たれがちです。ただ実際には、障害者雇用の在宅勤務は、
といった形で、出勤型勤務よりも職務の遂行能力がシビアに設計されているケースも少なくありません。

企業側から見ると、目の届かない場所で仕事を任せる以上は、一定のスキルや安定性が前提になるためです。
在宅勤務は競争率が高くなりやすい
障害者雇用の在宅勤務求人は、障害の種類※を限定していないケースが多いです。そのため、条件の良い求人ほど応募者が集中しやすくなります。
※障害の種類とは、身体・内部・精神・発達などの種類を指します。
そして、通勤型の求人ともっとも異なる点として、全国から応募可能である点も競争率が高くなる大きな要因になります。

そのため精神障害者から見ると、在宅勤務は理想的な求人である前に、ライバルが多くスキルや経験で評価やすいと捉える方も多いです。
障害者雇用の在宅勤務|競争率が高くなりやすい理由を深堀り

ここからは、障害者雇用の在宅勤務求人で競争率が高くなりやすい背景について、もう少し構造的に整理してみます。
在宅勤務は障害者のさまざまなハードルを減らせる
在宅勤務は、
といった理由から、障害の種類を問わず、幅広い当事者が「できたら在宅がいいな」とポジティブに捉えやすい働き方です。その結果、通勤型の障害者雇用求人よりも応募が集中しやすくなります。
その結果「スキルが高い障害者」もライバルになる
障害者雇用の在宅勤務求人では、
といった、幅広い対象者が選考時のライバルになります。
また企業側の視点で考えると、障害の種類というよりも、業務を安定して任せられそうか、遠隔地の採用でも成果を出せそうか、といった点が、採用のポイントになりやすいです。
そのため障害当事者が、「あまりスキルはないんだけど、在宅勤務なら安定して働けそう…」と考えて応募すると、思っている以上に採用を勝ち取るのに苦戦することも少なくありません。
企業側の事情も影響している
もう一つ無視できないのが、企業側の事情です。
企業は在宅勤務求人を出す前の段階で、業務の切り出しや進捗の管理方法・評価の仕組みづくりなど、出勤型雇用に比べて業務設計にコストがかかります。
そのため企業側は、在宅勤務者の募集について、
といった傾向になりやすいです。
結果として、少ない求人数に対して、能力を持つ応募者が殺到する構図が生まれ、競争率が高くなりやすいのが現状です。
在宅勤務は精神障害者におすすめ、と簡単には言えない

ここまでに見てきた通り、障害者雇用の在宅勤務求人は現状、「精神障害者が安定して働くのにおすすめの選択肢」と簡単に言えるような構図ではありません。
むしろ、
といった要素が、かなりストレートに見られる働き方です。だからこそ在宅勤務については、数ある選択肢の一つにすぎないという前提で考えることが大切になります。
それでも在宅勤務が選択肢になり得るケース
ここまでの内容を読むと、

じゃあ精神障害者にとって、在宅勤務は難しい選択肢なの?
と感じた人もいるかもしれませんが、そうとは言えません。

精神障害者における在宅勤務は、誰にでも向いているわけではない一方で、条件が合えば現実的な選択肢になります。
体調の波をある程度把握できている
障害者雇用における在宅勤務求人では、自分の体調を自分で把握し、無理をしすぎないよう自分で調整し、必要に応じて早めに周囲へ伝えられるといった、自己管理能力がいちばんに求められます。
そのため、
といった方は、在宅勤務との相性が比較的良いといえます。
募集要項の業務内容がある程度イメージできる
障害者雇用の在宅勤務求人では、事務系・バックオフィス業務・IT・Web関連など、パソコンを使用する業務が前提のケースが多いです。
そのため、

といった状態にある人は、応募時点でのミスマッチが起きにくくなります。
メールやチャットでのコミュニケーションスキルがある
在宅勤務では、対面でのやり取りがほとんどありません。
そのため、業務の指示や相談、進捗共有の多くが、メールやチャットといった文章でのコミュニケーションになります。
これは、「話すのが苦手な人に向いている」という意味ではありません。
むしろ、
といった力が、対面以上に求められる場面も多くなります。
特に精神障害のある方の場合、

調子が悪いときに連絡が後回しになってしまう
文章で伝えるのが負担になる…
と感じることもあるかもしれません。

在宅勤務は、誰かが近くで様子を見てくれる環境ではないため、最低限のやり取りを、自分から発信できるかどうかは重要なポイントになります。
完璧な文章力や、明るい雑談力が必要なわけではありません。
ただ、
- 業務に必要な連絡を取れるか
- 困ったときに、助けを求められるか
この点をイメージできるかどうかは、在宅勤務が合うかどうかを考えるうえで、一つの判断材料になると思います。
精神障害者にとって在宅勤務は合理的な「選択肢」の一つ

障害者雇用における在宅勤務は、「楽そう」「配慮が多そう」というイメージで語られがちです。
しかし実際には、競争率は高く、求められるスキルや自己管理能力も決して低くありません。
そのため、すべての精神障害者におすすめできる働き方 と、簡単に言えるものではないのが正直なところです。
一方で、
といった点から、条件が合う人にとっては、在宅勤務はとても合理的な選択肢にもなります。
大切なのは、在宅勤務ができるかどうかではなく、いまの自分の体調や特性を前提に、無理の少ない働き方を選ぶことです。
在宅勤務も、数ある働き方の一つです。特別視せず、過度な期待もせず、いまの自分に合うかどうかを冷静に考える材料として、捉えてもらえたらと思います。
病気や障害を抱えながら在宅で仕事をしたいと考える方向けに、想定されるルートの全体像についてまとめた記事もあります。

